09年2月、ASCO(American Soceity of Clinical Oncology:米国臨床腫瘍学会)理事会は、がん治療費問題に関する指針を採択し、その内容が09年8月の学会誌に掲載*されました。以下、その概要についてご紹介します。 *注)“American Society of Clinical Oncology Guidance Statement: The Cost of Cancer Care”Journal of Clinical Oncology Vol27,No23 August 10, 2009: pp.3868-3874)
- 従来の治療選択は科学的根拠に基づく有効性と安全性の評価に大きく依存してきたが、近年、ASCOは高騰するがん治療費の問題に頭を痛め、特に最も弱い立場にある患者が治療費の負担により経済的苦境や破綻に追い込まれていることを憂慮している。
- ASCOはこの問題を直視し、科学的根拠に基づく、かつ効率的ながん治療を実現するために“Cost of Task Force”というチームを組成し、本指針は同チームが開発した。
- ASCOは次の取り組みを推奨し、自ら実践する:
- ①
- 患者とがん専門医の間の治療費に関わる十分な話し合いは、良い医療を実現するための重要な要素であることを認識すること:“Discussion of Cost As an Important Component of High-Quality Care”
こうした話し合いを通じて患者の状況を把握したうえで、がん専門医は、例えば、治療スケジュールの変更により患者の通院交通費を削減したり、患者が仕事を休まずに治療を受けることができるように調整することで、患者の経済的なさまざまな事情に配慮すべきことを指摘しています。
- ②
- がん治療に関わる医療従事者が、患者と治療費について円滑に話し合うことができるように、医療従事者向けの効果的な教育・支援ツールを設計・提供すること“Physician Education”
ASCOの“Cost of Task Force”は、がん専門医の活動を支援する具体的な方法について、既に検討し始めていることを伝えています。
- ③
- 高額ながん治療費に関する患者の認識・理解を十分なものとし、多くの治療選択肢の中から患者が納得のうえ治療法を決定できることに役立つ情報・ツールを開発すること“Patinet Education”
患者が治療法を決定するにあたり、患者の治療費自己負担分についてもきちんと情報が提供されることの必要性が指摘されています。
ASCOでは、最終的にがん治療費問題に関わる一連の活動を政策に反映し、よりよいがん治療の仕組みを実現することで、米国民により質の高い、効率的ながん治療へのアクセスを確かなものにしたいと結んでいます。 今回の指針の特徴は、がん治療費について患者さんへ説明することを医療関係者だけの義務として押し付けるのではなく、医療関係者がそうした活動を円滑に行えるようバックアップする仕組みも準備し、その上で新しい社会システムを構築しようとするところにあります。 本サイト開設の動機となった「治療選択肢と治療費は、一般商品がそうであるように、ワンセットで患者さんに示されるべきである」という問題意識は、今回のASCOの指針と概ね方向を一にするものと考えます。
米国のがん治療において大きな影響力を持つASCOの態度表明を受けて、日本のがん治療関係者の間においても、新しい動きが出てくるものと推察しています。 まずは、全国のがん拠点病院にあるがん相談センターにおいて、あるいはセカンドオピニオンの場においても、治療選択肢と治療費がワンセットで説明される状況が速やかに実現することを期待します。
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