肝臓がんの治療選択肢
肝臓がん(肝がん)は、肝臓の細胞ががん化して悪性腫瘍となったものです。同じ肝臓内にできるがんでも、肝臓内を通る胆管にできたがんは「胆管がん」として区別してされています。
肝臓がんの場合、必ずといっていいほど、ウイルス性肝炎や肝硬変などの肝障害が背景にあります。健康な肝臓に原発性の肝臓がんができることはまずありません。そのため、肝臓がんの治療選択肢は、肝臓の障害度により大きく左右されます。
がんの大きさや個数、広がりで決める病期(ステージ)以外に、臓器自体がどの程度障害を受け、機能が落ちているかにより治療法を選択する。これが肝臓がんの治療が他のがんと大きく違う点の一つです。肝臓の障害度は腹水の有無や血液検査の結果をもとにA、B、Cの3段階に分類されます。Cが最も障害度が高い(状態が悪い)ものです。
がん治療において、他臓器に転移のない場合の治療は、患部を切除する外科手術が中心となります。しかし、肝臓がん治療においては、手術以外の局所治療も手術と同じくらい基本的な治療になっています。他臓器に転移がない場合で肝障害度A、Bの治療選択肢には、切除手術のほかに、ラジオ波焼灼療法(RFA)、肝動脈化学塞栓療法(TACE)、肝動脈塞栓療法(TAE)、および肝動注化学療法(TAI)、重粒子線治療などがあります。他の臓器への転移が認められる場合には、分子標的治療薬による薬物療法が行われます。肝障害度Cの場合、診療ガイドラインでは生体肝移植か緩和医療しか選択肢はないとされています。しかしながら実際には、手術が可能でかつ患者さんのメリットになると判断される場合には手術が、あるいは新しい抗がん剤治療が推奨されることがあります。
肝臓がんの治療費と自己負担額
以下では、肝臓がんの治療選択肢のうち、ラジオ波焼灼療法、肝動注化学療法について、治療費の構造と概算費用、および自己負担額の目安について解説します。
なお、がんの治療内容の大枠は、がんの種類にかかわらず共通しており、必要な治療費も、がんの種類よりもその進行度に大きく影響を受けます。早期がん、進行がんで見たがん治療の概要や治療費の構造については、まずこちらのページをご覧ください。→がんの治療費TOP
表記の「定期検査」は、手術や抗がん剤治療が終了した後に行うものを指しており、治療中に行われる検査等の費用は、治療費用の中に含めています。
差額ベッド代は一切含んでいません。
1 肝臓がん(肝臓障害度AorB):ラジオ波焼灼療法(RFA)
ラジオ波焼灼療法は、体の外から肝臓がんの患部に針を刺し、そこに電気を流してがんを焼いて死滅させる治療法で、開腹手術に比べて体への負担が少ないことが特徴です。高額療養費制度が利用できるので、自己負担額は初年度15万円、2年目以降は毎年6万円程度です。 定期検査は治療後もずっと毎月行います。これは、患者さんの多くがB型・C型肝炎やアルコール性肝炎といった肝臓の障害も患っており、そうした場合、一度部分的な治療を行っても、肝臓内の別の場所にがんが再発(異所再発)することが頻繁に見られるからです。常に経過観察をして、できるだけ早く再発を発見する必要があるのです。肝臓内にがんが再発した場合には、再び患者さんの状態に合った治療を繰り返します。実際に、肝臓がんが再発してラジオ波焼灼療法を2回あるいは3回行ったという方も珍しくなく、治療費が再発のたびに繰り返し発生します。
なお、肝炎にかかっている方はがん治療と同時に肝炎治療も継続する必要がありますが、肝炎治療については手厚い公的な助成制度(肝炎治療医療費助成制度)があります。その助成制度を活用するとがん治療の費用負担を軽減することが可能になります。B型またはC型肝炎の患者さんでがん治療を開始することになった方は、必ず市区町村の窓口にて、利用可能な助成制度についてご相談することをお勧めします。
2 肝臓がん(肝臓障害度AorB):肝動脈塞栓化学療法(TACE)
がんに栄養を運んでいる血管にカテーテルを入れて、そこから抗がん剤を注入し、その後に血管を塞ぐ物質を入れてがんを兵糧攻めにするとともに抗がん剤でがんをたたく治療法です。
使用する抗がん剤は塩酸エピルビシン,マイトマイシンC,シスプラチン,カルボプラチン等
(治療の流れ)
TACE手術実施後1〜2週間入院。事前検査等も含めると2〜3週間(なので入院20日で計算)。退院後1〜3ヶ月後に外来検査にて治療効果確認。その後も、定期的に画像検査や血液検査を行って、早期に治療後の再発や新たな腫瘍を発見し、繰り返し選択的肝動脈化学塞栓術実施。
→この条件で治療費計算必要。
3 進行肝臓がん 抗がん剤治療
進行肝臓がんの抗がん剤の治療費については、本サイトの「抗がん剤の治療費」をご参照ください。患者さんの体重や身長により抗がん剤の使用量が変わるため、同じ治療を受けてもその治療費には差が生じることに注意が必要です。
- 参考文献
- ・日本癌治療学会編 がん診療ガイドライン肝がん
- ・国立がん研究センターがん情報サービス それぞれのがんの解説「肝細胞がん」
近畿大学プレスリリース 2018年1月18日
世界初!肝臓癌の新規治療法の有効性・安全性を大規模臨床試験で実証→取材候補