がん治療費の自己負担額にご関心をお持ちになる方には、さまざまな事情があるはずです。 本サイトでは、次のような方々に本サイトの情報をご利用いただいていると想定しています。
- がん治療中、あるいはがんの疑い、確定診断を受けたためにこれから治療方法を行い、治療費の支払いに直面する方
- 将来、がんにかかった際に納得できる、十分な治療を受けることができるように準備しておきたいという方
ここでは、現在、もしくはこれからがん治療・治療費支払いに直面する方について、具体的な手段・対策をお話したいと思います。
急な「がん治療費」という出費に対して、お金を用意するための具体的な7つの方法
がん治療においては、当然患者さん側は知識に乏しいため、主治医主導で治療が選択され、進んでいきます。その際、この治療がいくらかかるかということを医師は示してはくれませんので、患者さん側は請求書が示されて初めて治療費を知ることになります。
既に「がん」というリスクが現実的に発生している、あるいは発生しつつありますので、将来発生するリスクに対する備えである民間の保険や共済等に今から入って、それを治療費に当てることはできません。そのため、現在持っている資産(貯蓄等)や保険契約、あるいは公的保険制度等をいかに活用して治療費を捻出するか、負担を軽減するかを考えなければなりません。治療のために使用可能と思われる「武器」を具体的にリストアップすると次のようなものがあります。
- 公的保険制度:高額療養費制度、保険者の付加給付、その他公的助成制度
- 現在加入している民間がん保険・医療保険(生命保険の特約を含む)
- 貯蓄を含む金融資産
- 土地・建物などの不動産
- 生命保険の契約者貸付制度
- 保証ローン
- 無担保ローン
1.の公的保険については、日本は国民皆保険制度をとっていますので基本的にはすべての方が利用可能です。まず、公的保険制度の利用をよく理解し、最大限活用することそのものが治療費対策の最大の武器であることは疑いありません。
公的保険制度の中には高額療養費制度もありますし、患者さんやご家族の自己負担を減らすことに大きく役立ちます。さらに、サラリーマンの方で大手企業の健康保険組合や中小・中堅の同業者が集まって作った健康保険組合、さらに共済組合等に加入されている場合には、プラスアルファの付加給付が支給されることがあります(給付内容は保険者ごとに異なりますので、会社の人事部などに確認してください)。がんの治療費の個別相談にも乗ってくれるはずですので、健康保険組合や市区町村といった「保険者」を最大限活用することをまず考えましょう。当サイトでも費用負担を軽減できる、医療費控除などの公的制度についてご紹介していますので、ご活用ください。
次に、公的保険で不足する部分を補ってくれるのが②の民間医療保険です。がんにかかった方、診断された方、疑いのある方は新たに加入できませんので、既に加入している保険がある場合、給付範囲を確認して利用します。
3.の説明は不要かと思います。貯蓄、その他の金融資産があれば、自己負担額に関する心配は軽減されるでしょう。
4.不動産は、自宅以外であれば売却して換金して治療費に充当できますが、日本では公的保険制度によって、がんの治療費に何百万円、何千万円といった治療費が必要になることは稀ですので、選択肢としてあまり優先度は高くないかもしれません。
不動産の売却にはある程度時間がかかりますし、不動産譲渡所得に対する課税への配慮も必要です。また、自宅であっても、不動産に担保を設定して通常より低い利息で貸付を行っている金融機関があります。がん治療の分野では不動産担保金融はポピュラーではありませんが、「リバースモーゲージ」と呼ばれるスキームが既に存在します。銀行・信託銀行に相談されるとよいと思います。ただ、一般論でいう と、日本の金融機関はがんというと直ぐに「死亡」=ハイリスクという風に直線的に理解し、ローンそのものへと踏み切らないところが殆どです。教育ローンという言葉は耳にされたことがあるかと思いますが、美容や審美歯科治療を除き「疾病ローン」のような治療に要する費用を対象にしたローンについて聞いたことがないはずです。がん治療についていうと、唯一、重粒子線の治療を行う患者さんに対し、当該治療施設のある自治体の金融機関が、その治療施設と提携してローンを提供している例があるだけです。これは、重粒子線の先進医療技術料が300万円前後と高額で、かつ自治体の税金を使って施設が建設されたために地元の方に配慮したものです。そのため、当該施設で重粒子線治療を希望するすべての患者さんにローンを提供しているわけではありませんし、ローンの実行にあたり第三者の保証を求められることもあります。
5.は一般的にはあまり知られていませんが、生命保険には、「契約者貸付」という制度があり、急な資金が必要になった場合などに、加入している生命保険の保険会社からにお金をかりることができます。しかも銀行のカードローンやクレジット会社のキャッシングなどが最大で14〜18%程度の利率なのに対して、生命保険の契約者貸付はそれらより低い3〜8%程度の利率でお金をかりることができます。ただし、契約者貸付はすべての保険商品で使えるわけではなく、保険会社ごとに利用できる保険が決まっています。契約者貸付制度が利用できるのは、終身保険や養老保険などの「解約返戻金」がある保険に限られていますので、ご自身が加入している生命保険で貸付制度が利用できるかどうかはコールセンターなどに問い合わせてみるとよいでしょう。
6.は、家族や第三者に保証人になってもらいお金を借りる仕組みです。
7.は、消費者金融と呼ばれているものです。担保や保証人を探す必要がなく使い勝手は良いでしょうが、利息が高いのが特徴です。固定収入が期待できず、長期の療養を必要とするがん患者さんの必要資金調達手段としては不適であると思われます。
もちろん、ここに挙げたもの以外でも、親族や知人からお金をかりることができたり、工面してもらうことができれば、利息のかかるローンを利用するよりはるかによいでしょう。
全国のがん診療連携拠点病院に設置されている「がん相談支援センター」では、ソーシャルワーカーなどの専門家が、がん患者さんの治療に伴う様々な悩みの相談に乗ってくれます。相談できるのは治療のことだけに限らず、治療費に関する相談も可能です。
その病院にかかっていない患者さんでも相談を受け付けてくれますので、ひとりで悩まず気軽にこうした施設を利用しましょう。
最寄りの「がん相談支援センターを探す」
https://hospdb.ganjoho.jp/kyotendb.nsf/xpConsultantSearchTop.xsp